死生観光トランプ
ここにひと組のトランプが届きました。名前は「死生観光トランプ」と風変わりなもの。
一枚一枚異なるイラストが踊り、どれも意味深な物ばかり。それもそのはず、これは世界各地の色々な地域や民族の死生に関する文化や習俗を紹介したイラストなのです。
実は縁あって私もイラストを使っていただいたのです。(写真の手前の2枚のエースがそれです)
下のリンクは参加イラストレーターにインタビューをした制作御述です。
https://readyfor.jp/projects/shiseikanko-trump/announcements/143765
いただいた資料を読み、ネットでさらに深追いして、「死」にまつわる人間の「念・思い」に想いを馳せながら描きました。
例えば左側のエースには人間の頭部が描かれています。これは「ツァンツァ」といって、人間の干し首なんです。なんとおぞましいと思われることでしょう。ツァンツァはエクアドルからペルーにかけてのアマゾン川流域に暮らす先住民族によって作られたもの。部族間での戦闘で敵の闘士を倒すと、その首を刎ね頭蓋骨を取り出し、薬草で煮て防腐処理を行います。そして口や目を縫いつけます。これは死者の怨念を封じ、持っている知恵を閉じ込めておくためなのだそうです。そうして干し首は拳大ほどに縮み、聖なる霊力を備えたものとして羽根やビーズで美しく飾られたりします。
この地域を征服した西洋人によってこの奇異なるミイラは装飾品のようにヨーロッパに持ち込まれ、高価で取引されることになりました。ツァンツァは交易品となり、商人はアマゾン奥地まで入り込み買い漁りました。やがてツァンツアが尽きてしまうと、今度はツァンツアを作るために他の部族を襲うようなことまで始まり、西洋からは武器が引き換えに与えられ部族間の争いは一層激しくなったという悲しい時代もあったそうです。「首狩族」と恐れられた彼らよりも、漁夫の利にほくそ笑むヨーロッパの商人の方が恐ろしいと思いました。
私が死んだ時にはこのトランプを棺に入れてもらおう。