お寺で葬儀をやってみたところ・・・

先日、お寺の本堂で一件の葬儀が勤まりました。それはご高齢の女性をお送りする式でしたが、親族は入院中の夫と県外に嫁いだ娘二人。様々な理由から正太寺ですべて引き受けることとなりました。

ご遺体を寺の座敷に安置して、まず枕経を勤め、喪主の娘さんと私住職とお手伝いくださる葬儀社の担当者の三者で打ち合わせが始まりました。
ここでお花の数、お弁当の用意、返礼品のこと、棺の種類から霊柩車や送迎バスの手配までたくさんの項目に確認、判断、発注が繰り返えされます。こんなにもたくさんのことを一度に、それもこのタイミングで決めなくてはいけないことに驚くと共に、私はこれまで式場に伺っても、何も感じぬままにただ用意された状態を眺めていたことに初めて気づきました。
座敷にご遺族の方が泊まられるというので、タオルやティッシュの用意やら、近所のドラッグストアーの案内などバタバタするうちに夜も更けてまいります。

翌日は朝から親戚の方が弔問に訪れたり、通夜の支度が本堂で始まったりと慌ただしく過ぎてゆきました。お通夜の支度が整い、御棺も御内陣の前に据えられると、本堂がいつの間にやら、なんとも良い雰囲気の式場となっていました。それもそのはず、なんと言っても祭壇が本堂のご本尊をお祀りした荘厳そのものなのですから、これ以上葬儀にふさわしい場はないのではと思いました。
家族葬でということで参列者の数も20名にも満たないほどでしたが、厳かな中、落ち着いていて、心やすらぐお通夜となりました。進行も住職の私が前に立ってご案内し、マイクも使わず肉声でのお勤め。孫達も初めて手にしたであろう勤行本を見ながら、とつとつと一緒にお勤めしてくれる声も聞こえ温かな気持ちになりました。

その晩はそのまま親戚は帰られ、ご親族は座敷で二泊目を迎えられた。夜遅くにも何度も棺を孫達が覗きに行ったり、座敷からは子ども達の黄色い声が聞こえてきたりと賑やかな夜となりました。
まるでお寺で民宿をやっているかのような気持ちになってきて、こんなお寺のありかたもいいなあと思います。いざという時に、そっと助けてくれて、そばにいてくれる。そんなお寺でありたいですね。

翌日は葬儀です。昨晩とほぼ同じ顔ぶれでのお勤めでした。お寺で葬儀を出すことの良さは、何よりも時間に余裕があるということでしょうか。葬儀そのものが終了すると、通常ですと急いでお花入れをして斎場に向かうのですが、私はこのお花入れをゆっくりやってもらいたいと思い、式の開始時刻を余裕をもって早めにしていただきました。お孫さんもお花を入れたり、おばあちゃんのお顔をなでたりととても素敵なひとときになったと思います。

御棺も本堂から数名の男性の手によって、車椅子用スロープに沿って霊柩車に運ばれました。私も斎場に赴き、灰葬のお勤め。
お骨は再び本堂へと迎えられ、初七日法要。その後は座敷で精進落としの会食となります。もうこの頃になるとご遺族の方も、お孫さんもお寺に馴れてくださり、私もまるで親戚の一員かという気持ちにさせていただきました。

今回のお寺での葬儀を出させていただいて、一番強く感じたことは、僧侶がご遺族に寄りそうためには、このお寺での葬儀は最上の場となってくれるよい機会ではないだろうかということです。
これまでも一般的な葬祭ホールでのご葬儀において、私はできる限りご遺族に心を開いていただけるよう、常に心配りをしてきたつもりですが、それはあくまで式に際しての一部分のことでしかなかったと痛感しました。
喩えれば、これまではご遺族のそばには葬儀社のスタッフがいらして、僧侶である私はその対面にいたのです。それが今回のお寺での葬儀ではご遺族の脇には葬儀社のスタッフとそして私、僧侶がいるという形ができあがりました。それはやはりご遺体のお迎えから、ご遺族に落ち着いていただき、安心してもらって、そこから初めて、葬儀の打ち合わせに入るという導入があり、途中でも何度か顔を出しては困りごとはないだろうか、不安なことはないだろうかと声を掛けさせていただきました。3日間の間に何度も何度も言葉を交わし、お茶したりして初めて言葉が届いてくれたと思います。
これは人の土俵である葬祭ホールに読経にゆくお坊さんという立場ではできないことでした。

今回の貴重な経験をこれからに活かそうと、まずはお寺での葬儀をお勧めすることは勿論ですが、葬祭ホールを選ばれる方にもこれまで以上にご遺族に寄りそうことを意識してお手伝いさせていただこうと思います。

トイレも遠い、風呂もなし、近所には食事をするところもないような正太寺で、ご葬儀を出すことを決断されたN家さま、本当にありがとうございました。不束なことも多々あったことでしょうが、笑顔でお帰りになる姿に感謝するばかりでした。

正太寺ではホームページでもこのような呼びかけをしております。

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お寺で葬儀をやってみたところ・・・” に対して2件のコメントがあります。

  1. 福井県 内藤 一 より:

    良い記事読ませて頂きました

  2. 酒井宏光 より:

    ええね、こういうのも。

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